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ITや経営の情報 > 情報大航海プロジェクトとエントロピーの克服 |
| 2006/12/18 織田 幸博 |
1. ITproニュース
ITproという日経BPのメールサービスを受けていますが、そのなかで下記
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061206/256126/
の記事を見て「情報大航海プロジェクト」というのが進んでいると知りました。
――――――――― 一部を引用 ―――――――――――――――
経済産業省が進める検索エンジン開発プロジェクト「情報大航海」。来年度から3年をかけ,150億円の予算を要求している。7月に「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」が発足,11月末時点で産官学56団体が参加している。しかし,インターネット上で交わされる意見を見るかぎり,このプロジェクトに対する評価があまり芳しくない。
・・・・・
よく聞かれるのは「今さら税金を投じて日本版Googleを作るのか」という批判だ。
――――――――― 引用終わり ―――――――――――――――
どうやら検索エンジンであるGoogleに対抗する国産検索エンジンを開発するプロジェクトのようです。
検索エンジンに関してよく言われる問題点は次です。
「検索エンジンの1ページ目に出ないと、アクセスされない。つまり検索の上位にかからないものは情報の価値がないに等しい」
「検索の順位付けはグーグル内部のアルゴリズムで決めている。アルゴリズムは自社内で開発して、どんどん更新している。従ってグーグルは自分の都合の良いものだけを上位にすることができる。つまり世界的な情報支配をたくらむことが出来る!情報統制世界を作ろうとしている」
ちょうど次の議論に近いです。
「WindowsOS一辺倒では、OSレベルで国家機密の盗聴の仕掛けが仕込まれる恐れがある。従ってLinuxなどのオープンシステムにしていかないとだめだ」
かなりハリウッド映画っぽいですが、まあ話としてはおもしろい。
2.情報大航海プロジェクト
ところでこのプロジェクト自身の認識が全くなく、これはいかんと「グーグルで検索」し、下記URLから報告を入手し、見てみました。
http://www.meti.go.jp/press/20060616006/press.pdf (1)
目的を要約すると(冒頭のITpro記事の図1より)
・ ネットの中の多種多様な情報が有効に活用されていない。
・ 世界最高のネットワーク環境のわが国において、活用されていない情報をアクセス、解析、活用できれば新たなビジネスの創出が可能である。
やっぱり検索エンジンのグーグル対抗で、画像処理を中心とした高度化のようです。上記の(1)の資料に活用例が記載されています。
・設計製造向け(画像)データマイニング
・テレビ映像画像を用いた検索とe−コマース
など並んでいますが、事例の中で多少は役に立ちそうなのは「リモート画像医療診断」くらい。あとは何がうれしいのか分かりません。
航海に出たはいいが、迷走してマゼランのように途中討ち死?「大後悔」プロジェクトにならねば良いが??
一歩譲ってやるのは良いとしても記事によると150億も予算要求しているとのこと!経営応援隊は1桁少ない。このプロジェクトは大企業支援の色が濃いとも書かれています。大企業は空前の利益、国の予算はもっと中小企業支援に回すべきではないでしょうか。
批判の背景には「過去のプロジェクト(ICOT(注1)、シグマプロジェクト)の(失敗)の落とし前をつけてからやれ」ということもあるようです。しかしICOTは別として携帯電話や、組み込み機器などに使われているTRON-OSは一応シグマプロジェクトの成果だったのでは?と思います
3.ホームページ情報の乱立は必然?
現在、県では「ITを利活用した行政サービス募集」をしていると聞きました。詳細は以下URLを参照。
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/kikaku/jyosei/itkoubo/gyoseikoubo.htm
早速見てみると、現在県が提供している情報サービスが一覧表になっています。
なるほど「すでにこんなにいろいろな情報サービスしています。更に良くするためにこういう情報サービスがほしいというアイデアを提案ください」ということです。
ただ、現在のサービスの一覧を見てみると、これはなんだ?というのがちらほら見つかりました。さっと見たところ、ホームページ内容に重複があるように見え、整理不足の感があります。情報提供ページを担当課毎に作っているからでしょう。
例
・ 子供に対する不審者情報(県警)
・ 不審者情報掲示板(県)
これは官庁の縦割り組織だからというより、「人が違うから、組織があるから」にいきつくでしょう。各部署が自分たちのミッションとして情報発信していくことは当然です。Web2.0の時代は、従来のWeb情報の受け手の役目が中心ではなく、全員が自由に発信する「双方向性」が大事と言われています。そうであれば予めルールを決めるとか、誰かが規制をかけるというのはなじみません。解決策としてはポータルサイトを作るくらいしかないが、その管理は大変でしょう。
4.大航海プロジェクトの意義
自然の状態では「エントロピーは増大する」(注2)ことは熱力学の法則として確立された事実です。エントロピーを減らす(情報を整理する)にはコストをかけ続けなければならないということです。
ならば、ホームページなどの情報が乱立することは前提として対応するしかない。考えてみれば利用者の立場からは、ホームページの構成やありか(URL)はどうでも良く、「これがほしい」と言うだけで的確な情報を提供してくれれば良いのです。
例
休日に子供が病気になった。やっている診療所はどこなのか、個別のホームページから探している時間はない。
質問 「今やっている近所の休日診療所」
という問い合わせに対して的確に出てくれれば良い。
(近いところから順に提示、診療科ごととかの工夫は当然してね)
つまり、「検索エンジンがポータルサイト」代わり。
(おっとこれって県の求めているサービスニーズの一部かも???)
なるほど、ということは「情報大航海プロジェクト」はすばらしく正鵠を得たプロジェクトではないのか?
(下げたり上げたり、なんのこっちゃ?もちろん皮肉ですよ。)
5.再びサーチエンジンへの懸念と経営
冒頭のサーチエンジンへの疑問は、少し過剰反応のような気がしますが、上記のように情報が自由に発信される時代では検索のやり方も変わってくるのではないでしょうか。
きれいに構造化されたホームページにして、めくりやすくする。トップページに検索のための魅力あるキーワードを的確に埋め込むこと、などはWeb1.0の考え方なのかもしれません。下位ページに価値のある情報が書かれているかもしれません。つまりホームページの構造によらない、フラットな(「無構造な」)情報も拾い上げる「公正・平等な」検索ルールが望まれます。
特に気になるのは「外からのリンクが多いほど価値のある情報だ」と認識するルールがあるらしいことです。これは科学技術論文が、他の論文での引用が多いほど評価が高いとされていることと同じですが、これは危険性をはらんでいます。ページ間の相互リンクを組織的に張る事も行われているかもしれません。
冒頭述べたように検索エンジンは少数意見を圧倒し、さらにより少数意見化してしまいます。カオス理論のバタフライ効果のように、最初の少しの優劣がどんどん拡大し勝ち組と負け組を仕分ける。格差社会を作るとまでは言いませんが、代表意見に一気に集約する、などポピュリズムに陥る恐れがあります。この雑文も検索エンジンに頼って作っていますが、あくまでも道具でなければなりません。
「検索エンジンの結果は多数だが他人の意見」 とか
「検索の結果はマスのニーズを知るマーケティング情報」
と扱い、自分の考えで判断することが大事です。
企業経営では多くの人がやっている経営方針を真似することでは差別化ができず、その分野は価格競争にいずれ入る。他社と差別化するためのニッチ戦略を探さねばならない、というのは経営戦略の常道です。
「情報大航海プロジェクト」も「情報検索の公平性」、「情報統制・操作の防止」をどう担保するかも課題としなければならないでしょう。
以上
(雑談的ですが、でも結構深いでしょ)
(注1)ICOT
新世代コンピュータ技術開発機構。通商産業省(現経済産業省)が推進していた「第5世代コンピュータ開発プロジェクト」の中核組織。並列推進処理の開発などの成果を残したが、1998年に解散。
(注2) エントロピー増大の法則
エントロピー (Wikipediaより)
エントロピー(entropy)とは、本来熱力学の気体の属性の一つだったが、研究が進むにつれ気体から得られる情報に関係があることが指摘され、情報理論に応用されるようになった。一般に「乱雑さ」を表すと解釈されている。
例 (織田)
・ お湯と水を混ぜて放置すると、ぬるま湯になってしまう。しかしぬるま湯が自然にはお湯と水にわかれることはない。そうするためにはエネルギーの投入が必要です。
・ 散らかっている部屋を整理するには「掃除、整頓」というエネルギーの投入が必要です。
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