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 お役立ち情報 > 雑談 > 「政策用語」
2006.5.4 織田幸博
 
・谷垣財務大臣の失言
3/20付けの雑談は
「量的金融緩和政策の解除」ってどういう日本語だ?
でした。先日たまたまテレビで谷垣財務大臣が「・・・量的金融緩和政策の停止」と言って、すぐ「解除」と訂正していたのが流れました。「おっ、やはり本音が出たぞ」と思いました。やっぱりまっとうな言葉使いは「停止」なのだと。雑談の最後にも書きましたが、一般の人には意図が分からなくするための「政策用語」なのでした。つまり「解除」とはいかにもいろいろ規制してきたことを開放する「良い政策」なんだと思わせるための言い回しなのだと。ここは谷垣大臣の正直さを見てしまったのですね。そういえば、このたぐいのお役所言葉が他にもあったなぁと思い出しました。

・「調整」
「政策用語」の典型が「調整」です。学生のころ「市街化調整区域」ということを知り、これは家を建てるときに、ばらばらに建ててでたらめなつくりにしないために、道路とか街区などをうまく都市計画する、つまりコントロールすることだと理解していました。コントロールなんだからボリュームのように上げたり下げたりすることと。ところがしばらくたって調整とは「抑制」、「制限」の言い換えだと知りました。この地域には新しい建物を建てることをほぼ禁止することなのだと。
後年、「年金併給の調整」という用語にぶつかりやっぱり制限なんだなあと再確認しました。ちなみに「年金併給の調整」とは、複数の支給条件が重なった時に支給額などに制限を設定することです。ただ少しましなのは下記のように政府の説明文書に明確に「停止」と正直に記載されていることです。
http://www.sia.go.jp/seido/nenkin/heikyu.pdf より(記載の一部の例です)
・・・また、老齢厚生年金は子に対する加給年金額が加算されている場合に、障害基礎年金と老齢厚生年金を併給することを選択したときは、老齢厚生年金の子に対する加給年金額に相当する部分が支給停止されます。
(引用終わり:難しい!要するに子への加算か、障害年金かのどちらかで、二重取りはしない、ということ)

・「改正」
これももっと気に入りません。「愛国心」を盛り込むという「教育基本法の改正」の動きなどが報道されています。「改正」とは「もともと間違っていた、または社会環境の変化で現実に合わなくなっているのを直す」という使いかたであるべきで、この場合は中立的な用語として「改定」、または「改訂」と言うべきです。教育基本法の「改正」とはいかにも良くする、改善するのだ、と思わせる政策用語です。そういえばかつては「安保条約改定」と言っていたのを思い出しました。当時はまだまっとうなセンスがあったのでしょう。

・「前向きに検討・善処」
「県庁の星」という映画を見てきました。あの「踊る大走査線」の織田裕二が主演です。「セカチュウ」の柴咲コウが相手役。県庁のエリートが官民交流の実習で三流スーパーに派遣され失敗し続けるも、最後は持ち前の能力を生かしてスーパーの経営を立て直します。研修が終わり県庁に戻り、自分が以前関わっていた福祉施設の建設計画に対してコスト半減できるという提案書を提出します。ところが現在の担当者が「検討した結果、この提案書はほぼ達成できる」と知事と県議会議長に報告すると、議長が「君、前向きに検討・善処すると言っただろう」と言いつつ、ゴミ箱に捨てるのが結末です。つまり「前向きに・・・」というのは、「やらない」ことの言い換えであるという常識の再確認でした。
ちなみにこの映画では茨城県庁の2階ロビーがロケで使われています。関係部署を訪問する時に待ち合わせする長いすも写ります。エレベータシーンの一部もそれらしい気がします。なお、観客には茨城県庁職員らしきスーツ姿の人もちらほら。

・「三位一体」
「改革」も「改正」と同じで「改善」されるように思わせる言葉です。しかしもとの言葉の本来の意味と、実態・実効がかけ離れている最たるものがこれでした。
三位一体のもともとの意味は、次にあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BD%8D%E4%B8%80%E4%BD%93
「父なる神」と「ロゴスである子なるイエス・キリスト」と「使徒などに下された聖霊」の3つが、皆尊さが等しく、神は固有の三つの位格でありながら、実体は同一であるという意味。これら3つの位格はしばしば簡潔に父と子と聖霊と言い表される。アウグスティヌスは三位格の関係を「言葉を出すもの」父、「言葉」子、「言葉によって伝えられる愛」聖霊という類比によって捉えた(『三位一体論』)。三者はそれぞれ独立の相をなしつつ、一体として働き、本質において同一である。
(引用終わり)
「三位一体」改革の分かりやすい解説は次にありました。
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20040626A/
 (前略)
で今、政治で騒がれている三位一体とは、こういうことです。
(1)国庫支出金を減らす。
(2)税源を地方に移譲する。
(3)地方交付税を見直す。
(中略)
まとめると、三位一体改革によって、(まあちょっと理想的な結果論ですが)
・地方は自主財源を得て自立し、中央のいうことを聞かなくてもフリーに政策を行うことができる。地方分権が進む。
・国会議員は、これまでの地方の利益誘導型のスタイルから、国家の根幹政策を考えるプロ集団となる。国政選挙は、純粋に国家のあり方について論じる場になる。
(引用終わり)

 前の引用のように三位一体の本来の意味は、「本質的に1つのものが、3つの形で表象されている(形而下として現れる)」ということで、神の唯一性・絶対性を示す正に西欧一神教の考え方です。これに対して「三位一体改革」政策は3つの政策施策をセットで行う、というだけで「三点セット改革」でしかありません。「だんご三兄弟」風に言えば「地方財政三兄弟改革」という程度です。それをいかにも「神秘的でありがたいものだ、良いことなんだ」と思わせるために「三位一体」と名づけたのでしょう。正に政策用語そのものです。

 「政策用語」には注意してかかることが必要と分かりました。
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